波になって

風が波になった
陽が暖めた空気が吹かせた
夜の冷えた暗がりが招き入れた

波に揺られた私も浜辺を少し水に浸す
風に乗り飛ぶ私も大気を少しあちらへ押しやる

夕焼けが巡り朝日になる束の間
私たちはほんの少し進化する
生命を含んだ自然に加担する

浜辺に寝転がれば青空が私を包む
路上でだってそうだったはずだ
校舎の屋上でだってそうだったはずだ

つまるところ思考など
波に自ずと慣れ切る身体の賢さに比べれば
ふいに生まれる言葉と言葉の美しさに比べれば
風に吹かれたならば飛んでいく
陽に照らされたならどうでもよくなる
数多の類いさ

大空に抱かれ安らいだ私だけなら
言葉などいらなかった

大海に抱かれ安らいだ私だけなら
言葉など生まれなかった

砂浜が渡した小石たちを流す
波は二度と戻らない
私たちは二度とない視線を交わす
空いた場所へと風が向かう
よい旅路をと地平線が告げる

本日も読んでくださりありがとうございます。だんだんと波に慣れ、転ばなくなり、沈まなくなり、気づけば揺られてぼーっとしている。そう言うことが自然にできる身体というのは、僕なんかより遥かに頭がいいのだなぁと感心したんです。