誰も幸せにしない正義感なら捨てちまえ
ミントの効いた煙草の香り
キツめの声の優しい台詞がその波に乗り
倒れ込まない程度の毒
必要なら飲むさ
語った顔に歴史を感じる
人には言えない
抱えたものが軽やかに舞い
重く光る空気
目の前のたった一人は
大勢の中の一人ではないのだけれど
大勢から見た私一人も
そうであるのだということはよく忘れる
語りかけるあなたもそうなのだと
わかってはいるつもりだけれども
更新されていく街
変わりゆくことを否定したくなるいつもの道
変わり続けなければ生き残れぬと叫ぶ国
新しいことを思いつくのをやめてくれない頭
連動する心躍ることを忘れない心
一瞬で一行書ける
十分で一節書ける
三十分もあればそうだな
詩が一つ出来上がる
だからといって一日に二十本どころか
二本も満足に書けやしないから
私は人間なのだと思う
一瞬で書けたわけではないのだと悟る
費やした寿命の重さが胃にのしかかる
なるだけ沢山一日に出来たならいいなとか
いつの時代の話だいと優しく言いたい
ビルを建て過ぎた東京
マンションを建て続ける下町
空はどこだい
野良猫は見上げることをとうに忘れた
烏は土の香りを思い出せない
人は海へ森へ向かう週末
希望はあるかと問われれば
今朝目覚める分はあったみたい
そう答えて微笑むとする
舞う埃に含まれている過去の自分
日差しが当たり輝くのなら
意味があったと思っていいさ
そのくらいの優しさとロマン
拾い集めて生きていく優しい人を音楽が慰める
いくつもの正義が小競り合っているのでも
いくつもの夢が交差しているのでもなくただ
川の心地を肌が忘れ
森の音色を耳が忘れ
緩やかに月日をかけて
大らかさを忘れゆく私たちなのだとしたら
辿り着いた今なのだとしたら
この掌から生まれゆく未来はせめて
微睡んだ暗がり
夜更けの路地裏みたいな心持ちから
狭い部屋で生まれたみたいな閃きから
照らしうると信じて日暮れ
現代人
本日も読んでくださりありがとうございます。深く考えない。深刻に受け止めない。あくまで軽やかに。打席に立ち続け、それでいて常に芯を食う。時代を置いてきぼりにする。ああ何の話だったっけなこれ。