夜、移ろい赴く湾岸の向こう。小さな海にかかった橋を渡り、夜景を眺める。冷たい風が多くを退け、透き通った空気が純度の高い光を私の下へと運ぶ。何を呟くこともなくただ、それを受け取る。
ならば今、自由。ならば今、幸福。誰かが言うならもうそれでいいだろう。探すのに疲れたなら見つかるものでもないはずなのに、満足してここだと決める。それでいいなら初めから其処に居たよと叫んでおくれよ。
真っ暗闇からスポットライトが照らす人。いつか歌っていたのはそんな話。思い出すように聞いて夜を私に溶かしていく。海辺が私を運んでいく。
歪んだ音が響き渡る。アンプから鳴るギターの音で、何かを思うようになったのはいつからだろう。笑うようになったのは、泣けるようになったのはいつからだろう。今夜も、音楽のある人生で良かった。
本日も読んで下さりありがとうございます。よき夜からの話でした。