正直、人に頼まれて文章を書く時や言葉を考える時は、書き始めるのに勇気がいる。
執筆という行為には、目に見える、触れられる、木材とか金属とかそういう類の材料は無いし、「これを使えば大丈夫」という機械もソフトウェアもない。
本当に何も書かれていない白紙のページを前に、「本当にここに、自分の中から美しい言葉たちがちゃんと生まれてくれるだろうか」と少し不安になる。
けれどこの漠然とした不安は、なんというか本番前のステージ袖で待つ時の緊張感や、何か大舞台の前のそれと似たものなんだろうなと、最近気がついた。
もちろん書くことへのそれなりの自信というか、書けると思う、自信みたいなものを裏付けるだけの練習も思考も経験もある。けれどこの目の前に広がる、自分が何もしなければ何も生まれない場所を前に、全ては自分次第なのだということを改めて実感する。
この感覚を恐らく人は、不安と言ったり緊張と呼んだりするのだろう。
深呼吸をして、背筋を伸ばして、僕は今日もステージに上がる。書き始める。
生きているってこういうことを言うんだろうなと思いながら感じながら。静かに確かに、息を吸っては吐いてを繰り返す。
筆が走る。やがて言葉が踊り始める。
不安は徐々に消えていき、程よい緊張感と共に、夢中へと落ちていく。
何十何百何千通りの文字の組み合わせの中から、選び繋いで結び、文章になる。
そう改めて考えると、どんな文章も偶然の積み重ねで出来た神秘的なものにも少し思えてきたり。しないかね。
本日も落書きを読んで下さりありがとうございます。よりよく踊る、よりよく綴る。その果てしない繰り返しを重ねた先で生まれる、永遠に語り継がれる言葉たち。憧れの言葉たち。