ページをめくる。

ぶっちゃけ、素晴らしい本を読んだからといって人生が変わるなんてこと、少なくとも僕の生きた数十年では未だに経験したことがないくらいには稀有なことだと思っている。

もちろんそりゃあ、余韻に浸って数時間、いや数日を費やしてその感動を咀嚼するということはあるし、その時に、「どうやらこの本は僕に確かに影響を与えたなぁ」とも思う。思うけれども、果たして本当に未来永劫その本が僕に、僕の人生に影響を与えているのかと改めて考えてみると、なかなかに疑わしい。

何にせよ、感動したという事実を思い出すことはよくあるし、その時のことをかなり鮮明に覚えていたりもする(事実からかなり美化されていたりもするが)。けれど本に限って言えば、その内容を、その一説なりその文章を、言葉を覚えているかと言われると、なかなかに難しい。もちろんその本が良かったことは覚えているけれど。当時読んで感動したことも覚えているけれど。そうしてじゃあもう一度読むかと問われると、もう一度読むものでも無い気がして、本を元の場所へ置く。

ただ、人生を、自分を支え続けてくれる本というのは、あるのだと思う。
そういう本は、ずっと手の届くところに、気軽に読み返せる場所に並べていて、毎日のようにその背表紙は目に入るし、よく手にとってパラパラめくる。

結局はそうやって、日々の中で何気なく、何回も、何十何百何千回と目にして触れて確かめて、ようやく自分の一部に、人生の彩りになっていくじゃないだろうか。

本もそうだけど、人もほんとはそうだと思うんです。
一度の出会いで変われるほど、人生を方向転換される程、僕もあなたも本当は柔くない。
だから何度でも読み返して、何度でも会話して、一緒に過ごして、良い影響を及ぼし合って、生きていきたいんだと思うんです。

本日も落書きを読んでくださりありがとうございます。
自分の意思で、何度でも口にする。読み返す。過ごす。関わる。交わる。
そうやって、より良く変わりゆく自分を望み、眠り、目覚める。その連なりの刹那に幾度となくめくるページ。