うた

世の中はうたで溢れています

緑の中に春をあなたが見つけたとき
そこに確かにあるように

風の中に自由をあなたが見つけたとき
そこに確かに感じるように

ここにも
そこにも
うた

音のない部屋であくびをするとき
夜中に布団から抜け出すとき
ポロンポロンと言葉のかけらは生まれ落ち
私のあとを転がります

あらまぁと拾い上げ
ポケットにしまいます
するとツラツラと続く言葉が顔を出し
あっという間に膨らんで
ずっとそこに隠れていたうたがこちらをそおっと覗くのです

長いあいだ
世の中にいなかったのは私の方で
うたはずっとまんべんなく
ここにもそこにも
今ものんびりしているのです

うたた寝をする私の横にも
寝返りを打つあなたのそばにも
通学路をゆくあの子のあとにも
風を切る車の上にも
路地裏の自販機にも
横断歩道の白と白との間にも
うたは生きているのです

本日も読んでくださりありがとうございます。無理に追いかけずとも、その様子を眺めて、のんびりついていけたなら。