セレナーデ

どこまで書いたか忘れてしまった手紙を前に。気付けば日が落ちる頃合い。私は今日から殆ど消えていたのだと知る。ペンは机から落ち、床を転がり少し遠くに佇んでいる。もう二度と私の元へは訪れないだろうフレーズを思い出す努力などこの世には無いのだと悟り、ただぼんやりと眠気覚ましに窓を開ける。冷えた水をグラスに注ぐ。私にとってのまた一つ黄昏時がゆく。カラスがこちらを見つめる。微笑みを送れど返事はなくけれどもただ放たれたように飛び立った。終わりの光が私に差し込む。始まる。