ありもしない話だけれど、
例えば信号待ち。
聞き慣れない鳴き声と共に、ふと見上げた空をビルの影へと消えてゆく何かを見た。
あれは実は現代の鳥では無くて、見たことも無いけれど確かに大昔に飛んでいた、恐竜と鳥の間のような、鳥と恐竜の間のような何かだった。
何を突然言ってるんだと思われるだろうけれど、信じて欲しくて僕はあなたにこの話をしているわけではなくて、ただ此処はそういうことがある世界なのだということを思い出してほしくて話している。
きっと僕等が子供の頃、世界にはもっと沢山、色んな生物たちが住んでいて、魔法が沢山、それは沢山存在していて、だから僕らは色んなものをとっても怖がったり、とっても楽しみにしたり、とっても好きになったりしていたんだと思う。
両親に手を引かれてスキップしながら旅したテーマパークで、みんなが寝静まった後の真っ暗な世界を歩いてトイレまで行く廊下で、兄弟と友達と剣とマントを纏って毎日のように明け暮れた戦いで、出会っただろう愛しただろう今はすっかり忘れてしまった奇想天外で可笑しくて楽しくて怖くて美しかったすべて。
どんなに忘れてしまっていても、あの日々の果てに、同じ世界の未来の中に僕等は今生きている。だからきっと、あの魔法も生物もお宝も何もかも、消えてしまったわけもなく、ちゃんとずっとこの世界に存在していて、大人になった僕らは見えなくなってしまった、忘れてしまっただけ、なんじゃないかと、聞き慣れない鳴き声につられて見上げた空を眺めて、思ったんです。
本日も落書きを読んでくださりありがとうございます。僕等は物事を忘れることで大人になっていくのだとするのなら、何度だって抗って、思い出して、何度だって無邪気に、子供のように今日も世界を味わい尽くて、生きていきたい。僕等は魔法も奇跡もちゃんと使える起こせるのだと信じて、いつまでだって生きていきたい。